個人再生手続|認可取り消しの事由|弁護士詳解
個人再生は法律で定められた手続きなので、大幅に借金(元金も)を減額することができます。ただし、再生計画の認可後に不正が発覚した場合、個人再生の認可は取り下げられます
個人再生手続の認可が取消される場合の不正発覚の事例
財産隠しがあった |
---|
詐欺や脅迫、賄賂などによって再生計画が成立 |
虚偽の説明・事実と違い陳述書の作成 |
必要な書類や資料を提出しなかった |
手続費用を納付しなかった |
履行テストを怠った |
再生計画案を期限内に提出しなかった |
偏波弁済を行った場合(特定の債権者にだけ返済した) |
新たな借り入れを行なった |
浪費をした(ギャンブル、ゲーム課金、外国為替証拠金取引(FX取引)など) |
偏頗弁済を行った場合 |
過去に自己破産しており、免責が認められてから7年経っていない場合 |
判例にみる|個人再生手続の返済計画認可が取消される不正発覚

再生計画認可決定の取消|一括請求
国が認めた救済方法・裁判所に個人再生手続を申立てることにより元金割れの大幅な減額が可能になる。しかし、その返済計画認可の裏に不正があったことが発覚したら、認可決定は取消となる
再生計画認可決定に対する抗告審の取消決定に対する許可抗告事件
最高裁判所第一小法廷,平成19年(許)第24号,平成20年03月13日
民事再生法174条2項3号の「再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったとき」には、再生計画案が信義則に反する行為に基づいて可決される場合も含まれるとして、同号の趣旨を潜脱し信義則に反する再生債務者らの行為に基づいて再生計画案が可決されたことから、同号所定の事由があるとした事例。
【判決本文抜粋】
法174条が、再生計画案が可決された場合においてなお、再生裁判所の認可の決定を要するものとし、再生裁判所は一定の場合に不認可の決定をすることとした趣旨は、再生計画が、再生債務者とその債権者との間の民事上の権利関係を適切に調整し、もって当該債務者の事業又は経済生活の再生を図るという法の目的(法1条)を達成するに適しているかどうかを、再生裁判所に改めて審査させ、その際、後見的な見地から少数債権者の保護を図り、ひいては再生債権者の一般の利益を保護しようとするものであると解される。そうすると、法174条2項3号所定の「再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったとき」には、議決権を行使した再生債権者が詐欺、強迫又は不正な利益の供与等を受けたことにより再生計画案が可決された場合はもとより、再生計画案の可決が信義則に反する行為に基づいてされた場合も含まれるものと解するのが相当である(法38条2項参照)。
前記事実関係によれば、〈1〉抗告人の債権者のうち相手方Y2、相手方Y1及びBにとっては、抗告人が民事再生手続を利用する方が抗告人につき破産手続が進められるよりも抗告人に対する債権の回収に不利であり、抗告人が再生手続開始の申立てをして本件再生計画案を提出しても、届出再生債権者のうち抗告人の代表取締役であるA及び同人が代表取締役を務めるCの同意しか得られず、本件再生計画案は可決されないことが見込まれていたこと、〈2〉抗告人が再生手続開始の申立てをする直前に、抗告人の取締役であってそれまで抗告人に対する債権を有していなかったDが、回収可能性のないFのCに対する債権及び抗告人に対する保証債務履行請求権を譲り受け、その一部を同じく抗告人の取締役であってそれまで抗告人に対する債権を有していなかったEに譲渡したこと、〈3〉DとEは、それぞれ、債権譲渡を受けた抗告人に対する債権を再生債権として届け出て、本件再生計画の決議において、その有する議決権を本件再生計画案に同意するものとして行使したこと、〈4〉DとEによる上記議決権の行使がなければ議決権者の過半数の同意を求める法172条の3第1項1号の要件が充足することはなかったが、上記議決権の行使により同要件が充足し、本件再生計画案が可決されたことが明らかである。
そうすると、本件再生計画案は、議決権者の過半数の同意が見込まれない状況にあったにもかかわらず、抗告人の取締役であるDから同じく抗告人の取締役であるEへ回収可能性のない債権の一部が譲渡され、抗告人の関係者4名が抗告人に対する債権者となり議決権者の過半数を占めることによって可決されたものであって、本件再生計画の決議は、法172条の3第1項1号の少額債権者保護の趣旨を潜脱し、再生債務者である抗告人らの信義則に反する行為によって成立するに至ったものといわざるを得ない。本件再生計画の決議は不正の方法によって成立したものというべきであり、これと同旨をいう原審の判断は是認することができる。したがって、本件再生計画を認可しないとした原決定は正当であるというべきであり、その余の論旨について判断するまでもなく、本件抗告は棄却すべきである。