個人再生手続|強制執行停止|弁護士詳解
個人再生手続を申立てる前に差押えになった場合はどうしたらいいのかの説明です。
住宅ローン以外の借金滞納による強制執行

すでに差押えられてしまった場合は、「強制執行停止上申書」を再生を申し立てる際、申立書に添付する「上申書」に給与差押がされている旨を記載し、「開始決定」が出たら差押えが取り消されるようにできるので、できるだけ早く「開始決定」を出すように発令を促すようにします。
抵当権以外の住宅の差し押さえも個人再生で中止可能
住宅ローンを組んだ銀行以外の債権者でも強制信仰で住宅を差し押さえることができます。しかし、住宅ローンが残っていると…第一抵当権者から配当を受けますので、差押をした債権者はその残りしか回収できないことになります。
住宅ローン以外の借金があっても、返済が滞ると強制執行により住宅を差し押さえることは可能です。
当然のこと、第一抵当権者は住宅ローンを組んでいる銀行や保証会社です、住宅ローン以外の債権者が回収できる金額は、ローンの残額を差し引いた分だけです。
ですから住宅に残存した価値がないとなれば、住宅ローンを組んだ以外の債権者は、まずは給料などの差し押さえをしてくる可能性が大きいと言えます。
しかしこのような抵当権以外の住宅の差し押さえも個人再生で中止することが可能です。
それは民事再生手続き39条に再生手続きの開始があったときは、強制執行の手続きは中止する規定があるからです。
民事再生手続39条
第三十一条 裁判所は、再生手続開始の申立てがあった場合において、再生債権者の一般の利益に適合し、かつ、競売申立人に不当な損害を及ぼすおそれがないものと認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、相当の期間を定めて、第五十三条第一項に規定する再生債務者の財産につき存する担保権の実行手続の中止を命ずることができる。ただし、その担保権によって担保される債権が共益債権又は一般優先債権であるときは、この限りでない。
2 裁判所は、前項の規定による中止の命令を発する場合には、競売申立人の意見を聴かなければならない。
3 裁判所は、第一項の規定による中止の命令を変更し、又は取り消すことができる。
4 第一項の規定による中止の命令及び前項の規定による変更の決定に対しては、競売申立人に限り、即時抗告をすることができる。
5 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
6 第四項に規定する裁判及び同項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第十条第三項本文の規定は、適用しない。
(再生手続開始の申立ての取下げの制限)
登記事項「差押」の抹消手続は自分でやる
執行処分を取り消すのに必要となる書類
自動的に抹消されない【登記目的:差押】の抹消は、民事執行法40条に基づき、自分で保全処分の取り消しを申し立てることになります。
執行処分に必要となる書類は、
「強制執行の停止および執行処分の取り消しを命じる裁判の正本」です。
税金の滞納はどうしたらいいのでしょうか?個人再生手続きに含めることができますか?について
納税は国民の義務ですから何よりも優先すべきです。しかし実際はあまり重要視せず、そのままになっている方が意外と多く、差し押さえられて初めて慌てる方が多いようです。電話や書面などで何回も催促されているのにかかわらず応じることなく滞納してしまうと、財産を差し押さえられてしまいます。公売にかけられ換価され、そのお金は税金に充当されます。個人再生手続きの届出には公租公課の滞納について届け出ることになります。減額されることはありません。払わないと当然に差押えになる可能性があります。
税金滞納処分の差押は個人再生手続きでも中止できない
税金の滞納は「一般優先債権者」として個人再生手続きの制約を受けない

税金の支払は計画的に支払う算段をして準備する。
所得税や市民税など税金がどうしても払えない場合は、すぐに市役所に行って分割納税のお願いをすることです。税務署や市役所からの督促を無視していると強制執行ということになります。家財道具も持っていかれる話を聞きますが、よくある話です。
滞納処分により住宅の競売が進んでいる場合は個人再生手続きでも競売になり換価されます。そのため、税金滞納により家を差押られている場合は、個人再生による住宅ローンの特別条項は通用しません。
税金滞納処分から家を守る方法
個人再生前の税金納付は偏波弁済の評価を受けない
税金の滞納があった場合は、分割返済の計画案を税務署に持参して受け入れてもらえるよう説明しましょう。債務整理中であれば、債務整理の予定表を示し、具体的な解決策を提示することが肝要です。
税金滞納対策のポイント
①個人再生前に滞納した税金を完済する。
②個人再生前に滞納した税金を分割納付の協議をして猶予をもらう。
個人再生手続きを申し立てる前に、優先して特定の債権者に支払うと偏波弁済ということになりよくありません。しかし税金は法律上優先しても問題にならないので、他の借金を滞納しても解決しておく必要があります。住宅の差押が解除されれば、住宅ローンの特則を使用することができるので住宅を残すことが可能になります。
国税徴収法151条では換価の猶予の規定があります。
「滞納者が、納税について誠実な意思を有すると認められるときは、滞納処分による財産換価を猶予できる。ただしその猶予の期間は1年を超えることができない」とあります。
つまり、分納による協議をすることにより猶予が確定すれば個人再生で住宅ローン特則を使用することが可能になります。
第151条の2 税務署長は、前条の規定によるほか、滞納者がその国税を一時に納付することによりその事業の継続又はその生活の維持を困難にするおそれがあると認められる場合において、その者が納税について誠実な意思を有すると認められるときは、その国税の納期限(延納又は物納の許可の取消しがあつた場合には、その取消しに係る書面が発せられた日)から6月以内にされたその者の申請に基づき、一年以内の期間を限り、その納付すべき国税(国税通則法第四十六条第一項から第三項まで(納税の猶予の要件等)の規定の適用を受けているものを除く。)につき滞納処分による財産の換価を猶予することができる。
2 前項の規定は、当該申請に係る国税以外の国税(次の各号に掲げる国税を除く。)の滞納がある場合には、適用しない。一 国税通則法第46条第1項から第3項までの規定による納税の猶予(次号において「納税の猶予」という。)又は前項の規定による換価の猶予の申請中の国税二 国税通則法第46条第1項から第3項ま1又は前条第1項若しくは前項の規定の適用を受けている国税(同法第49条第1項第4号(納税の猶予の取消し)(次条第3項又は第4項において準用する場合を含む。)に該当し、納税の猶予又は前条第1項若しくは前項の規定による換価の猶予が取り消されることとなる場合の当該国税を除く。)
3 第1項の規定による換価の猶予の申請をしようとする者は、同項の国税を一時に納付することによりその事業の継続又はその生活の維持が困難となる事情の詳細、その納付を困難とする金額、当該猶予を受けようとする期間、その猶予に係る金額を分割して納付する場合の各納付期限及び各納付期限ごとの納付金額その他の政令で定める事項を記載した申請書に、財産目録、担保の提供に関する書類その他の政令で定める書類を添付し、これを税務署長に提出しなければならない。(換価の猶予に係る分割納付、通知等)