HOME | 自己破産 | 自己破産|非免責債権

自己破産しても払い続けなければならない債務とは

社会的責任を果たす義務(税金とか)扶養義務とかは自己破産してみ免責にはならない

自己破産|非免責債権とは|弁護士詳説

 

社会的な重要性(税金や養育費、罰金等)や債権者の保護(未払い給与や税金などの預り金や不法行為に基づく損害賠償請求権等)という観点から自己破産後も支払いが免除されない非免責債権について弁護士が詳しく説明します。

 
自己破産後も返済する義務がある税金・養育費

自己破産しても税金や養育費などは払い続ける責任がある


税金や社会保険料:
国や地方自治体への納付義務:年金・医療などの社会保障・福祉や、水道、道路などのみんなで助け合う社会的な資本による整備に必要なお金などは自己破産に関係なく納付しなければなりません。、教育、警察、防衛といった公的サービスを運営するための費用を賄うものも公共性・社会性の見地から必要になるため自己破産しても免除されません。
養育費:
子どもの養育費は、離婚などで定められた場合、自己破産しても支払いが免除されません。養育費の支払いは、民法877条で規定されている「親の扶養義務」に基づくものです。たとえ親が離婚していたとしても、親の離婚と子供の扶養義務とは無関係に親であるいじょう、親は子供に対する扶養義務を負い、その履行として養育費を支払う義務があります。
罰金:
犯罪行為で科せられた罰金は、裁判によって有罪となった場合に科せられた刑罰であり、その支払いは法的な義務です。罰金を支払わない場合、労役場留置という強制労働の刑罰が科される可能性があります。基本的には一括払いが原則ですが、やむを得ない事情がある場合は分割払いも検討してもらえます。自己破産をすれば免除されるものではなく支払う義務が生じます。
不法行為に基づく損害賠償:
故意または重過失による不法行為で発生した損害賠償請求権は、支払う義務が生じます。不法行為によって他人に損害を与えた場合、その損害を賠償する義務が法律で定められています。民法709条では、故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害した者は、その損害を賠償する責任を負うと定められています。 自己破産下から払わなくてよくなるものではありません。免除されません.
雇用関係に基づく請求権:
未払い給与や税金などの預り金など、雇用関係に基づく債権は、労働者を保護する観点から免責になりません。但し破産する者が個人か法人かによって個人の場合は免責されないのですが法人は破産すると消滅してしまうので非免責債権にはなりません。
個人事業主が破産した場合、従業員への未払い給与や預かり金(退職金など)は非免責債権となり、免責されません。払う義務が生じます。破産法第253条1項5号で定められた非免責債権の一つです。一方、法人として従業員を雇用していた場合、法人が破産すると債務の履行義務も消滅し、免責と同等になります。
債権者名簿に記載しなかった請求権:
債権者名簿に記載しなかった請求権は、債務者の過失や故意によるもので、債権者の権利を損ねるから払わなくとよいということにはなりません。親族関係の貸し借りでも同じことが言えます
債権者名簿に含めると、債務者に対して請求できなくなるところ、含めなければ請求できることになります。但し債権者名簿に含めたとしても債務者が自己破産した後も自分の意思で返済していくのは問題になりません。
親族関係に基づく請求権:
親族関係に基づく請求権が非免責債権に該当する場合とは、親族間の扶養義務(年老いた両親や問題がある姉妹など)や婚姻費用分担義務など、一定の家族関係に基づく義務が、自己破産しても免除されない債権として扱われる場合は免責されません。上記に記載しましたが子どもの養育費、別居中の配偶者への婚姻費用(生活費)などがこれに該当します。

参考までに非免責債権にかかる法律を掲載しましたのでご覧ください。



破産法253条(非免責債権)

租税等の請求権
破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
破産者が故意または重大な過失により加えた人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償
扶養の義務に係る請求権
雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権
破産者が知りながら破産者名簿に記載しなかった請求権
罰金等の請求権

 
破産法253条には実際にどのように記載されているのかご覧ください。
 
免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない。
一 租税等の請求権(共助対象外国租税の請求権を除く。)

(滞納している住民税・滞納している自動車税・滞納している固定資産税・国民健康保険・介護保険料・国民年金・下水道料金・保育料など国や役所が強制徴収の対象とする税金関係はすべて非免責債権者です)

二 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
(破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権です。たとえば、詐欺や横領、着服などです。ところで、この
「悪意」とは「故意」ではありません。同じような感じもしますが違います。悪意とは、民法の不当利得を論ずる時に使われ、不当利得の受益者が返還義務を負うかどうかの基準となるものです。また、故意・過失の故意とは、不法行為の責任を問う際の条件です。他人を害する積極的な意欲のことを指します。不貞行為の慰謝料や損害賠償は含まれません。)


三 破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)
(破産者が故意、または重大な過失により加えた人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償です。暴力を加えて怪我を負わせるとか(故意)、重過失の運転で人身事故を起こすなど(重過失)により他人の身体に危害を加えた場合の損害賠償請求権です。自転車の運転で人身事故を起こしたような場合は重過失になりません。程度によって物損事故で済んだような場合は免責になります。また離婚原因の慰謝料で、その内容が浮気による程度のものであれば自己破産をすることで免除になります。離婚原因がDVや暴力など直接的な加害行為である場合は、慰謝料は損害賠償金として非免責債権になります。)

四 次に掲げる義務に係る請求権

扶養に係る請求権です。夫婦間の婚姻費用の分担や,子供の教育費,民法上の親族間の扶養義務による扶養請求権です)

イ 民法第七百五十二条の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務

ロ 民法第七百六十条の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務

ハ 民法第七百六十六条(同法第七百四十九条、第七百七十一条及び第七百八十八条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務

ニ 民法第八百七十七条から第八百八十条までの規定による扶養の義務
(雇用関係に基づいて生じたい使用人の請求権などです。会社の社長が従業員に対して支払わなければならない給料などです)

ホ イからニまでに掲げる義務に類する義務であって、契約に基づくもの

五 雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権

六 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(当該破産者について破産手続開始の決定があったことを知っていた者の有する請求権を除く。)
(破産者が知っていて債権者名簿に記載しなかった債権者の請求権です。破産者名簿とは、破産の申立て時に裁判所に提出する「債権一覧表」に知りながら、若しくはうっかり債権者一覧表に記載し忘れた債権です。この「うっかり」はわざとでないにしろ,債権者の債権は免責されなくなります。それは債権者一覧に記載を忘れることにより,その債権者が破産手続きに参加して異議を述べたり,配当を得るチャンスを奪われるからです。その債権者の権利の保障のために破産手続きに参加できなかった債権者の債権は免責されなくなるのです。弁護士に依頼するときは債権者の件数に注意を払い、漏れた債権者がないか思い出して慎重を期してください。なお連帯保証人である場合、まだ一度も銀行などの債権者から請求を受けていないような場合は、忘れてしまう場合があります。また連帯保証人自身も連帯保証人になったことをすっかり忘れているという場合があります。申立人が一度も支払を滞納していないようなケースは連帯保証人を付けて契約したことを請求されたことがないためにうっかり忘れる場合があります。連帯保証債務をきちんと債権者一覧表に記載しておかないと自己破産後に、債権者から保証人に請求がいき連帯保証人から連絡を受けて初めて気づくことがあります。弁護士に依頼して安心していても、弁護士は通帳やクレジットカードの明細には、誰からの振り込みによる弁済か記載がないので気がつきません。記載を忘れてもすぐなら補正がきくので、一般的には意見申述期間前であれば補正ができます。また、気が付いたときは、すでに自己破産の手続きが終わっていたという場合です。その時は連帯保証人が自己破産の開始を知っていたはずの主張を立証して、裁判所で免責を争うことになります。)

七 罰金等の請求権

(刑罰による罰金・科料・追徴金・過料などです。自己破産をしても免除されません)

2 免責許可の決定は、破産債権者が破産者の保証人その他破産者と共に債務を負担する者に対して有する権利及び破産者以外の者が破産債権者のために供した担保に影響を及ぼさない。

3 免責許可の決定が確定した場合において、破産債権者表があるときは、裁判所書記官は、これに免責許可の決定が確定した旨を記載しなければならない。

4 第一項の規定にかかわらず、共助対象外国租税の請求権についての同項の規定による免責の効力は、租税条約等実施特例法第十一条第一項の規定による共助との関係においてのみ主張することができる。

 
 

非免責債権があると免責不許可になるのではないかという問題


 
非免責債権と免責不許可事由は同じではありません。非免責債権は、自己破産しても免責されない債務(支払わなければならない義務が生じている)のことです。一方、免責不許可事由(破産法252条1項で定められている免責にならない事由 、事情と考えてもいいでしょう。)は、自己破産しても免責が許可されない状態を引き起こす、ある事由のことなので、免責不許可事由がある場合、非免責債権に加えて、通常は免責される債務も免責されなくなる可能性があるということになります。
免責不許可事由については、裁判官の裁量で免責不許可事由があっても破産に至った経緯などを考慮して、裁判所が免責を許可してくれる場合もある(裁量免責)ことも書いてありますので、こちらをご覧ください。 ▶ 自己破産|免責不許可事由

非免責債権は他の借金が免除されることを前提にした例外的な債権

子供を扶養する義務は法律で決まっているし社会的に子供を養育することは親として責任を果たすということ。

離婚に関係なく子供の養育費は非免責債権


 
非免責債権と免責不許可事由とは無関係だということは理解できましたか。債権者から裁判所に「わたくしの債権は非免責債権だから、破産者を免責不許可にしてください」とお願いすることはできません。また、それにより裁判所が破産者を免責不許可にすることもありません。非免責債権が理由で免責不許可になることはありません。
もう少し詳しく見てみましょう
▶奨学金は免責の対象ですが、毎月の支払いが発生してない場合、また保証人になっている場合、「債権者一覧」の記載に忘れがちです。忘れてしまった場合は非免責債権になります。
▶破産者が直接に病院や薬局に借金ができてしまっている場合(治療費や薬代)は免責になります。しかし例えば子供のために治療費を負担していて、それを破産者の配偶者に分担請求している場合、婚姻費用や養育費の問題になり非免責債権になる可能性があります。
▶保育料も児童福祉法により、市町村の強制徴収が認められています。そのため、「保育所の保育料」は非免責債権になります。一方、「幼稚園の保育料」は公法上の債権ではありますが、滞納処分の規定がありません。非強制徴収公債権なので、非免責債権にはなりません。また、認可外の保育所の保育料も行政が強制徴収する債権ではありませんので、非免責債権にはなりませんので、注意する必要があります。
▶介護保険料は非免責債権です。介護保険料は税金や社会保険料と同様に市町村が強制徴収(滞納処分)をすることが認められています。国や市町村が強制徴収することができる債権者はすべて破産法上の「租税等の請求権」に該当します。
▶自己破産前に滞納していた公共料金は下水道料金だけ例外で電気・ガス代金は免責されます。
下水道料金は市町村が強制徴収することができる債権ですから租税等の請求権に含まれます。