自己破産|免責不許可事由|弁護士詳説
少しづつでも払っていくことになります。
それでは、どういった案件が免責不許可になるのでしょうか。このページでは、自己破産を申立ても免責にならない事案についての説明です。

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自己破産の免責不許可事由とは、一言でいえば借金がチャラにならない理由だと考えていいでしょう。
自己破産を申し立てた場合に免責といって借金を払う必要がなくなるというのが認められない理由ですが免責不許可事由といいます。
免責とは、自己破産の手続きを行って裁判所に認められれば、借金がゼロになる制度のことです。免責=自己破産 と思われていますが、免責決定がでて初めて借金を返済する必要がなくなるのです。 ギャンブルや浪費など自分勝手に借金を作ったというのは免責になりませんが、親の介護や特段の事情があっての場合は、誰が見てもかわいそうなケースですよね。そういった場合に、法的に借金をゼロにしてあげて、人生を再出発させてあげられるようにするのが自己破産の制度なのです。
一体どんな理由があるでしょうか。
・債権者を害する目的(債権者に払ういことをしないようにする目的)で財産を隠匿、損壊、処分する行為(本当は売ればお金になる、相続した家があるのに、一時的に兄弟の名義にしてしまって財産がないようにカモフラージュしたりすること)
・浪費やギャンブル、投機などによって財産を著しく減少させる行為(真面目に働いて稼いで借金を返済しようと考えず、ギャンブルで儲けて返済しようと思って逆に借金が増えてしまってもダメです)
・詐術による信用取引 (嘘をついてお金を借りたり返済するあてもないのにあてがあるような嘘もダメです)
・虚偽の債権者名簿を提出する行為(親族にお金を借りているよう場合でも、債権者として届けなければなりません。保証人に迷惑をかけたくないと思って除外してもダメです)
裁判所や破産管財人に協力しない行為(期限を守らなかったり、予納金を収めなかったりする行為はダメです)
・過去7年以内に免責を受けている場合です(事情がある場合は裁判所に申し出てみてください。裁判所が事情を総合的に考慮して免責を許可する「裁量免責」の制度があります。
借金を3年以内に返済できる返済能力があるのに借金をチャラにしようとして自己破産を申立てる場合もダメです
免責不許可事由は破産法第252条第1項に規定されており、裁判所が免責許可の申立てを判断する際に用いられます。どういった法律なのか 掲載しましたのでご覧ください。
免責不許可事由/破産法252条第1項
裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。 一 債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。(財産を隠したり、壊したりする行為。自己破産の直前に不動産などの財産を親族などの名義に変えたり,絵画など高価なものを別な場所に運んだりすると該当する)
二 破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、又は信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと。(法外な金利で借金をしたり、クレジットで購入した商品を換金する行為など)
三 特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと。(会社からの借り入れや知人、あるいは親戚などにばれるのをはばかり、優先的に借金を返済したりして、他の債権者の利益を損害する行為)
四 浪費又は賭博 その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。(競馬・競輪・パチンコ・賭博などギャンブルや収入に見合わないような高額な買い物などは浪費とみなされます。またFXや投資で一発逆転を狙って増やした借金も該当します)
五 破産手続開始の申立てがあった日の一年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと。(自己破産申し立ての1年以内に、返済ができない状況に陥っていながら、また自分でも返済できないことを承知で返済ができるようなふりや嘘をついて新たに借金をした場合に該当します)
六 業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、又は変造したこと。(故意に財産に関する帳簿や資料・領収書などを隠し,或いは破棄し,或いは偽造した場合です。過失の場合は免責不許可事由にはなりませんが偽造は過失にはなりません)
七 虚偽の債権者名簿(第二百四十八条第五項の規定により債権者名簿とみなされる債権者一覧表を含む。次条第一項第六号において同じ。)を提出したこと。。(故意に債権者に含めたくない債権者を債権者名簿から除外するなどして提出した場合です。誤って含めるなかった場合は免責不許可事由ではありません)
八 破産手続において裁判所が行う調査において、説明を拒み、又は虚偽の説明をしたこと。(説明を拒み、嘘の説明をしたりして破産管財人に協力しない場合です)
九 不正の手段により、破産管財人、保全管理人、破産管財人代理又は保全管理人代理の職務を妨害したこと。(不正な手段で、破産管財人や保全管理人などの職務を妨害したりする場合です。異議を唱える場合は法的に正当な手段があります)
十 次のイからハまでに掲げる事由のいずれかがある場合において、それぞれイからハまでに定める日から七年以内に免責許可の申立てがあったこと。(過去7年以内に免責を受けたことがある場合です。個人再生手続きをしてハード湿布免責といって、最後のほうで返済ができずに免責にしてもらった場合も含め7年の期間が経てない場合です)
イ 免責許可の決定が確定したこと 当該免責許可の決定の確定の日
ロ 民事再生法( 平成十一年法律第二百二十五号)第二百三十九条第一項に規定する給与所得者等再生における再生計画が遂行されたこと 当該再生計画認可の決定の確定の日
ハ 民事再生法第二百三十五条第一項(同法第二百四十四条において準用する場合を含む。)に規定する免責の決定が確定したこと 当該免責の決定に係る再生計画認可の決定の確定の日
十一 第四十条第一項第一号、第四十一条又は第二百五十条第二項に規定する義務その他この法律に定める義務に違反したこと。(免責審尋を欠席したり,債権者集会を欠席したりした場合,また財産に関する書類を提出しない,破産管財人の調査に協力せず要求を拒むなどした場合です)
★正直に、そして反省が深ければ認めてくれますので、必要以上に考えて画策などしなければ大丈夫です。常識を超えた贅沢な生活・生活水準が収入に見合わず無駄遣いが激しいなど、異常と思われる生活の場合は免責になりません。ギャンブルだけでないことに注意が必要です。
免責不許可となってしまうと、借金はそのまま残ります。しかも、破産者としての身分も復権することができません。
裁量免責 / 免責不許可事由があっても免責なる場合がある

深い反省文を書いて裁判所に提出する
破産法252条2項
免責不許可事由が存在する場合でも、「裁判所は破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。(破産法252条2項)」としています。
免責不許可事由があったとしても、その人の事情や反省具合から総合的に判断して、免責を許可することがあるということです。これを裁量免責といいます
非免責債権があると免責不許可になるのではないかという問題については こちらをご覧ください。 ▶ 自己破産|非免責債権